ベトナム人は、日本人の次にブランドものがだーいすき。とはいっても、まだまだパリにお買い物ツアーに行けるほどのお金持ちは数少ない。
それでも車はやっぱりトヨタ。テレビはソニーだし、バイクはホンダ……と、高い買い物はブランドで選ぶ。
当然、サイゴンの街はブランド商品でいっぱい、本物から明らかなニセ物までいろいろそろっている。
本物は、みなさんがおみやげにお買い上げになっても、いっさい問題ない。スオッチのように、日本とほとんど値段が変わらないものから、トリンプの下着のようにかなりお買い得なものまで各種ある。
明らかなニセ物も、お買い上げは問題ない(と思う)。冗談でリーバイスのサングラスや、セイコーの靴など買ってみるのもいいだろう(売ってるかどうかは知らないが)。
問題は、本物かニセ物か、どっちだかよくわからないものだ。その例をいくつか紹介しよう。
ローレックスの時計
街の目抜き通り、ドンコイ。だいぶん少なくなったとはいえ、まだまだ両側には時計店が軒を並べる。そして店先のショウウインドーには必ずローレックスが鎮座している。
値段を聞いて、相場より安ければまずニセ物と思って間違いないが、相場そこそこ、ちょっとお買い得っていうのは、どうなんだろう。
買うのはけっこうドキドキもの。本物なら 「やったーッ」 と、自慢タカダカだが、ニセ物だったら、明日から街を歩けないくらい落ち込むのは確実。
そこで本日は、とっておきの情報を公開しよう。
数年前、マニアがどう見ても本物という一品を、実際に買って日本に持ち帰り、時計屋で分解検査を頼んだ。
その結果、
「部品の6割は純正じゃあない。ニセ物とは言えないけど、100%本物とも言えない」
ということが判明した。
これ、本物だと思う? それともニセ物?
ナイキ製品
ちょっと前に大はやりしたナイキのエアシューズ。
アメリカでは手に入れるために殺人までおこって、ちょっとした社会問題になった。
そんなあこがれのエアジョーダンやノモマックスが、日本の半値以下で手に入る店。
ナイキ一筋の陸上マニアが本物と太鼓判を押したニューモデルは、購入後2ヶ月でソールがはがれはじめた。
ゴム系接着剤で修理をしつつ履いていたが、ソールと本体を繋ぐクッション部分 (つまり、エアーの入っている袋が押し込められているところ) が、本体から剥がれはじめて、ついに使用を断念。あえなくごみ箱行き。
後日いろいろ調べたところ、各パーツは工場直送の100%本物。
しかし、縫製、接着はシロウト仕事。シューズ用の圧着機や専用の接着剤を使わず、市販の接着剤に漬物石で仕上げたと言うのが真相らしい。
さて、こいつは本物? ニセ物?
ウイスキー
ご存知かどうか知らないが、ジョニー・ウォーカーというウイスキーは、本国スコットランドから原液を運んできて、現地で安いアルコールと混ぜてウイスキーにする。
コカコーラとおんなじ方式なのだ。
ベトナムでも、ほかのウイスキーに先駆けて安定供給を始めたジョニー・ウオーカーだが、最初はすべてシンガポールからの輸入だった。
輸入酒税の高いベトナムでは、街の格安小売店でも1本10ドル〜12ドルはする。
それがある日、行きつけの飲み屋のオヤジが
「ジョニ赤1リットルのボトル、15ドル」
と言ってきた。
どうも安く仕入れたらしい。
そのころは、かつて猛威を振るったニセウイスキーも影をひそめていたし、ボトルの口には逆注入防止装置もついていたので、酔った勢いで購入した。
それで、味はどうかというと、たしかにジョニ赤なのだ。微妙に違うのは香りで、ちょっとイモ酎っぽい。
完全に本物と認定されたシンガポール製ジョニ赤を、1杯もらって飲み比べる。
うーん、フレーバーはたしかに同じだが、やっぱりイモ焼酎で割ったような風味が漂う。
こいつの正体はまっとうなアンダーライセンスもの。ただ、ベトナム産のアルコールがイモから作ったもので、その風味が消えなかったらしい。
蒸留アルコールのアルコール度とか、その他マニュアル事項では測りきれなかった風味だね。
その後、ベトナム生産を中止したのか、品質管理を強化したのか、ジョニ赤焼酎バージョンにはお目にかかっていない。
さて、これはやっぱりニセ物?本物?
..........
以上の3例は、いったいぜんたい、本物なのかニセ物なのか。
きれいなオカマに、ハンサムなレズのお姉さんに優しくされたら、同性としてはうれしい? 気持ち悪い?。
ほらほら、本物とはなにかという大問題にぶち当たるでしょ?
誰が認定したら本物なのか? メーカー? 売り手? 買った本人?
こんなことを考えながら、今日も楽しくショッピングに出かけましょう。
ジャアク商会代表 藤井伸二の補足
ナイキのことならけっこうウルサイのがこの俺だ。なんたって、日本で作っていたころから履いてるんだから。いつの話? 20年くらい前かなあ。みんながハリマヤのシューズを履いてたときにナイキだから、いやー、思いきりバカにされたね、周囲から(笑)。
ワッフル・トレーナーだって持ってたぞ。黄色のヤツじゃなくて、青い廉価版のほうだけど。しかし、あれが名品だって? ライターは履いてから記事を書け、履いてから。あれは形を変えた鉄ゲタじゃないのか。走って楽しいなんてもんじゃないね。ソールがくるぶしに当たってソックスは破けるし、アメリカ人って変わった連中だなと思いながら苦しいランニングを続けた記憶がある。
でもまあ、そんな思いつきだけのクズシューズを懲りずに続々といまだに出すところに惹かれるんだけどね。あとが続かないシリーズを平気で出してくるのも底力っていうかアメリカンな連中っていうか、ともかくいいね。
そういえば、エアマックス95の本物だって俺は持ってる。出てすぐに買ったんだけど、評判は散々だった。履いてヨロコビ勇んで 「地球の歩き方」 の編集部に行ったときの屈辱は今も忘れない。「趣味が悪い」って一斉にボロクソに言われたな。だからキミタチ、進歩しないんだよ。
そうじゃなくて、ベトナムのナイキの話ね。
これ、笹原君が書いてるのは真実。というか、この 「ナイキ一筋の陸上マニア」って俺のことじゃないの?
それはいいとして、マテリアルは最高で細工は最低っていうのがベトナム製ナイキの特徴。これ、本当の生産ラインに乗って出てきた製品もそうで、接着がひどい。
もともとナイキは縫製が雑で、俺のエアマックス95も裏はすごい縫い方をしてるんだが、ベトナム製のヤツは接着剤がべとべとで、肝心のエアがクリアに見えないことすらある。
工場生産品でさえそうだから、町工場で作ったら、そりゃメチャクチャだろう。
最近日本で売り出されたズームエアのアルファシリーズだって、ベトナムの裏市場じゃ半年以上も前から流れてた。
なんか変な話だよなあ。 |