入国審査をすませロビーに出ると、現地代理店のタイ人が出迎えに来ている。 タクシーに乗ると男が切り出す。 「予定していたホテルは満室で泊まれないから、今夜は別のホテルに泊まる。そのことは、もう日本に連絡してある」 ホテルに行って荷物を下ろすと、男はすぐに具体的な話を始める。 「疲れているだろうからマッサージに行きましょう。さ、すぐ準備して」 その前に豪華な食事をする場合もあるが、結局はマッサージに行くことになる(出費はすべて日本人が持つ)。 「タイは女が安いから、さあさあ、遠慮せずにどうぞ」 これもなにかの接待かと思い、日本人は女と遊んでしまう。ついでに案内男の遊び代まで払ってしまうお人よし。 「じゃ、明日またお迎えに来ますので」 しかし翌日、いくら待ってもだれも来ない。そのころ日本では彼の消息がわからなくなって大騒ぎ……。 これは初めてタイに赴くビジネスマンがやられる詐欺の手口だ。 最近は空港で登録した人以外、この 「名前を書かれた紙」 を出せなくなったため、事件はほとんど起こっていないらしいが、それでも、あるいは別の手でカモるやつがいるかもしれない。気をつけよう。 ブラ これは、もうなくなったんじゃないのか? 藤井 そういう話もあるけど、どうだかね。このあいだ石井建設の社長を迎えに行ったときも、変なヤツは大勢いたぜ。 ブラ ホテルに着くなりソープに行くっていう感覚がすごいけど、連れて行かれるほうは不審に思わないのか。 藤井 それが接待だと思ってるんじゃないの? でも、金を払うのは自分だから、接待のはずはないんだけどね。 ブラ それで仕事になるんだったらいいんじゃないか。 藤井 まあ、この手口に引っかかった人で死んだ人はいないし、簡単に言えば、軽くだまされただけなんだよね。本社に叱られながらも、本人は、「いいガイドだった」 って思ってたりするんじゃないか。そういう人も、けっこういると思うんだよ、俺は。 |
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