タイの仏教と宗教概説4

サンガと派閥

 

 タイの仏教それ自身は 「サンガ統制法」 なる国法で厳粛に体制が確立されており、教義を曲げて解釈するような派閥の存在は認められていない。
 サンガの最高指導者はタイ国王である。サンガに逆らうことはすなわち国王に逆らうことでもあるのだ。

 そのタイ仏教には、いくつかの派閥が存在する。

 まず、現タイ仏教界の主流はマハーニカイ派と呼ばれる在来派閥で、圧倒的大多数とともに、タイの仏教界を制圧している。

 これに対する少数派代表は、ラーマ4世が王位に就く以前の出家中に始めたタマユットニカーイ派だ。
 こちらは上座部仏教のリバイバル運動に相当する一派で、戒律を極めて厳格に守り続けることを基本としている。
 教義は在来のマハーニカーイ派と同一だが、その緩んだ指導体制への反発から始まったように、より仏教と仏教経典の本質に迫る団体となっている。現国王であるプーミポン・ラーマ9世も、このタマユットニカーイ派の寺院で一時出家修行された。

 これら以外にも派閥は存在するが、なにしろ少数派であるし、なかには教義を誤って解釈しているとされ、サンガから訴えられている集団もある。

 たとえば、サンティ・アソークがその一派だ。この一派は、禁欲主義を極限まで高めた集団であり、仏教の原点を追求しているが、その結果としてサンガまで否定してしまった。
 また、知識人を中心に急速に支持者を集めているマハーカーイ派の活動もタイ仏教界を揺るがせているが、これら新興派もその存在に正当性があるだけに、サンガも完全に解散させることができないでいる。

 それ以外でも、マハーニカーイ派とタマユットニカーイ派が抗争することもある。
 基本的には上座部仏教であり、その本筋は今後も変わらないことは察せられるが、どの派閥が正しいとは、一概に言いきれない。
 それが現在のタイ仏教界が抱える問題でもあるのだ。

 

  

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