現在、タイ国民の95%は仏教徒であるといわれている。厳密な数字は確定できないが、それでも90%以下の数字にはならないはず。
タイ国憲法は国民に宗教選択の自由を認めてはいるが、国教は事実上、仏教だ。
ちなみに、タイ国王は仏教の最高擁護者であり、また仏教徒でなければ王位に就くことができない。
少数派宗教の代表はイスラム教徒だ。
彼らは、とくにタイ最南部の4県(ソンクラー、ヤラー、パッタニー、ナラティワート)に多く、ここでは県民の実に3/4以上がイスラム教徒となっている。これはこの地方が以前マレーシア領であったためだろう(マレーシアの国教はイスラム教)。
しかし、多いといってもイスラム教信者の占める割合は、全国民の4%以下。この南部4県を除く地域では圧倒的に少数であり、そこでの彼らは小さなコミューンを形成して暮らしている場合が多い。バンコク市内にも立派なモスク(タイではマスジットと呼ぶ)はいくつかあるが、この仏教国にあっては、やはり異端の存在といえる。
続く少数派はキリスト教だ。
少数だが、キリスト教の伝来はタイの近代化に大きく貢献した。いち早く教育の普及に乗り出し、学校を設立して庶民の啓蒙活動を進めたのが、このキリスト教伝道師たちだからだ。タイ近代化の父ラーマ4世も多くの外国人牧師や宣教師から語学と海外事情を学び、経済門戸開放政策を推進した。印刷技術をタイにもたらしたのも、彼らの功績のひとつだ。
本格布教の歴史は日本とほぼ同時期と思われるが、この超保守的仏教国家においても、成果は少しずつ上がっている。
とくに、進歩的な考え方の持ち主の多いバンコクには現代の腐敗したタイ仏教界に否定的態度をとる人も少なくなく、そういった不満分子が仏教に見切りをつけ、改宗するケースもあるという。
また、素朴な土着的精霊信仰者の多い北部山岳地帯でも教えに諭されるものが多いと聞く。
この精霊信仰は、タイ土着の宗教といってもよく、現在のタイ社会でも非常に重要な位置を占めているのだが、今ではそのほとんどが仏教と密接に結び付いており、純粋な信仰者は山岳地帯の少数民族を除いては存在しないと思われている。
逆に、少数だがよく目立つのがヒンドゥー教徒やシーク教徒のインド系一派だ。
バンコクに住む印僑は6万人ともそれ以上とも言われており、商業地には必ずターバン男やシヴァ神の写真を持ち歩く男たちがいて、朝に夕に祈りを捧げている。
宗教比率では取るに足らない数だが、彼らはどこにいても目立ってしまう。とくに多いのは、パフラット市場と、スクムビット通りソイ11の周辺だ。 |