私はBTSのナショナル・スタジアム駅から徒歩でワット・プラケオを目指していました。
場所はサオチンチャー(大ブランコ? 工事中だった)で現在位置を確認していたら自称、日本に行ったことがある歴史の教師をしているという男で、
「どこに行くのか」
と聞いてきたので、
「ワット・プラケオだ」
と言ったところ、
「もうすぐ閉まっちゃうから明日行きな──この時点で気づくべき1。後で調べたら閉門まで1時間以上あった──ここに行くといい」
と言われたのが、
○ WAT MAHA(スリーピングブッダ)
○ PAN-SIAM(!)
○ ワット・ベンチャマボピット(大理石)
のシークエンス。
「君は運がいい。ちょうど今PAN-SIAMでプロモーションをしていてツーリストはタックスフリーだ。内緒だがPAN-SIAMはミキモトからオーダーを受けているんだ。だから、銀座で同じ物を買うとしたら3〜4割安いよ」
もともと宝石に興味はこれっぽっちも無いので別段気にしなかった(本当におめでたい)。
その男は、近くに止まっていた(!)トゥクトゥクに、
「50バーツで廻れ」
と言い、トゥクトゥクの運転手は渋々ながら了承する(この時点で気づくべき2)
この距離をタクシーで廻ったら(私の計算では)200バーツ弱。
いくらトゥクトゥクとはいえ、その4分の1の値段で行くのはどう考えてもおかしいと思うべき。
ちなみに私はこのとき特に何も考えていなかったのだからおめでたいとしか言いようが無い。
さて、トゥクトゥクで行きましたよWAT MAHA。
しかし、ここにも刺客が居たとは……。
まず、スリーピングブッダ(有名なワット・ポーと比べるとかなり小ぶり。それでもデカイ。)を見て、それから本尊(?)がある建物へ。
ここで一人の男がお参りしていたが、私に話し掛けてきた。
「海外でレストラン経営している」
「いつ来たのか」
「どのくらい滞在するか?」
など、ありがちな応酬のあと、来ました。
「これからどこに行くんだ?」
PAN-SIAMとワット・ベンチャマボピットだと伝えると、食いついてきましたよ。
第一の刺客と同じく
「秘密だがミキモトが発注している」
「去年ここで買い物をしたが今年同じようなものが3割高くなっていた(投資でも使える)」
先物投資会社のアホな外務員の説明を聞いていきなり15枚買ってしまったことのある私は「美味しい話か?」とおめでたい発想をしてしまったのでした。
話すこと30分以上。雨も降り出した。
トゥクトゥクの運転手は怒ってもう居ないかなと思ったら、きっちり居ました(!)。(この時点で気づくべき3)
雨の日はきっと稼ぎ時のはず。たった50バーツのためにきっちり待つのはおかしい。
さて、土砂降りの雨の中、トゥクトゥクはPAN-SIAMに向かってひた走るのでした。
雨の中ひた走り着きましたPAN-SIAM。
店の外には警備の人(?)が2人いて、私がトゥクトゥクから降りるとき傘を差し出してきた。
多分、私の場合、ここでやられちゃったんだと思う。
こういう店には日本でさえ入ったことが無いので、舞い上がってしまったのだと思う。
そして店内へ。
まず、5分間のビデオ(宝石が商品になるまでの過程)を見た後、実際に商品を見られる。
「何をお探しですか」
と店員。
彼女でもいればプレゼントにとでもいえるのだが、悲しいので、父親にプレゼントすると言うことにした。
こんなの単なる口実。
店員はルビーとサファイアのリング10数本出してきた。
刺客が言っていた呪文「ミキモト」は出てこなかったが、ルビー・サファイア共に希少価値でそれぞれ年に30・20%ずつ価格は上昇していると言っていた。
せっかくカメラを持っていっていたので録画すればよかった。
金のときと同様、美味しい話に目がくらみ買いましたよ、ルビー2.01カラット(ファイネストクオリティー!)。
幸か不幸かクレジットカードが財布の中にあった…
店員に明日もやっているのかと言ったら「今日までだ」と言うので、クレジットカードで買うことに。
伝票に漢字でサインしたのでした。
刺客の呪文に、
「買うならファイネストクオリティーがいいよ」
と言うのがあったのだが、普段記憶力が悪いにもかかわらずなぜか、呪文を反復することが出来たのだった。
確かに見た目はきれいな赤色。もともと浮いた金だしまあいいかとの思いもあった。
なんだかんだで30分以上PAN-SIAMに滞在して、いざ帰ろうとしたとき乗ってきたトゥクトゥクのことを思い出した。しかし、運転手はしっかり笑顔で待っていたのだ……
(これが、のちのち詐欺ではないかと言う考えを持つ理由の一つとなった)
さて、最後のワット・ベンチャマボピット、雨が降っていたし、時間がもう夕方だったので人気もまばら。
間抜けな私は、ずいぶん運転手に待たせてしまって迷惑かけたなと思い、ジュースを奢る…‥・
見終わった後、最寄のBTSの駅まで行ってもらう。
トゥクトゥクの運転手には200バーツ渡した。
何か騙された気がしてきたのは夜8時頃からだった。
胃がムカムカしてなんか変な感じ。なるべく深呼吸した。
でも、何だか寝付けなかった。
本当は友人に相談したかったのだが、運命のいたずらか、コンタクトできなかった。
「宝石詐欺」とタイトルにはあるが、実際第三者に鑑定を依頼したわけではない。
しかし、数人の友人に見せたところ、これはそんなに価値のあるものではないよと言われ、返品しようと思ったのである。
次の日会えず。次の日の朝、やっと友人に会えた。
友人に一通りいきさつを話したら、次のアイデアをくれた。
@ 駄目モトで日本大使館に言ってみる
A できたらツーリストポリスと一緒に店まで行き、警官の目前でルビーを返す(契約
書と交換する)
B クレジットカード会社に支払いを止めてもらえるよう連絡する
で、日本大使館に電話したが、英語に堪能な私はちんぷんかんぷんだったので、直に現場(大使館)に行くことにした。
さて、今回が返品に関するくだりで、ある意味クライマックスでしょうか?
@ 土曜日だったのでオフィスが閉まっていたのでAに行く。
A とりあえずVictory Monument駅まで行き、そこのツーリストインフォメーションで最寄のツーリストポリスの詰め所を教えてもらう。学生さんのアルバイトだったようだが一生懸命探してくれた。
最寄はViemanmekMansionの中のツーリストポリスとの事だったので、そこに向かう。
12番のバスと言われたがバスは何か怖くて乗れそうに無かったのでタクシーを拾った。
B Viemanmek Mansionのオフィスまで行ったが警官はお昼休みで居なかった。
スタッフが「何だ何だ」と集まってきた。警官が来るまでの間、
「何を買ったんだ」
「いくらだったんだ?」
「モノを見せてくれ」
などと、やつぎざまに言って来た。
それでもみんな、
「大丈夫だから心配するな」
と言ってくれたのにはとても嬉しかった。
しばらく経ったあと警官到着。いきさつを話したあと、同行してくれないかと頼んだところ、快諾。
すぐPAN-SIAMにバイクで向かった。
訪タイ2回目にして日本の白バイとは全く違うのだが、警官の後ろに乗るなんて事は夢にも思わなかった。
そして、到着。警官が拳銃を腰にしたためたのを見て、ちょっと緊張した。
店の外に3人ほど店員が出てきた。
ショウルームではない別の部屋に通された。
何やらかんやら質の悪いものは売っていないと主張してきたが、何が何でも返品するこちらの姿勢とツーリストポリスを従えて行った事が効いたのか、返品と引き換えに90%の金額(=54,000バーツ)を提示してきた。
場合によっては6割程度になるかもしれないと言われていたため、その数字で満足してしまったが、粘ったら95%ぐらいにはなったのかどうか?
個人的には大満足になっている(この時点で品物と引き換えに契約書を貰うことをすっかり忘れている)。
警官に丁重に礼を言い、拒まれたが100バーツ渡して別れた。
帰国後友人に話したら、
「何で契約書を貰わなかったのだ」
と駄目出しされ、クレジット会社に支払いを止めてもらえるよう電話したが、
「サインをしたら店側が言ってこない限り支払いを止めることは出来ない」
といわれた。
確かに示談書には90%返金すると言うことは書いてあったし、54,000バーツ減額すると言うバウチャーも貰ったのだが、そういわれると非常に不安になってしまい、はじめて国際電話をかけることに。
私「60,000バーツの支払いをストップしてくれ」
店「54,000バーツ入れることになっている、書類だって作ったろ。心配するな」
クレジット会社に電話して数字が反映されてないから電話しているのに……。
押し問答になってしまい、
「2週経っても確認できなかったらまた電話くれ。でも心配するな。ちゃんと手続きはとってある」
ということで電話を切った。
店に返品して7日後、54,000バーツの返金が確認できました。
54,000バーツの返金による相殺で私は19,001円をPAN-SIAMに払うことになりました。
●今回わかったこと
・停まっているトゥクトゥク(タクシー)には乗らない。
・寺は今日は休み(とか、もう閉まる)と言われたら、適当に話をそらしてその場を立ち去る。
以上2点です。
これから行く人は参考にしてもらえれば幸いです。
詐欺に引っかかる人が減ってくれれば嬉しいです。
匿名のS
(2005.07.26) |